診療科のご案内

耳鼻咽喉科(聴覚・人工内耳センター)

耳鼻咽喉科が担当する領域は耳・鼻・のどで、これらすべての疾患を対象に診療を行っています。

特に「難聴」に関しては、小児から高齢者までの患者様に対して診断や治療法をご提案しております。必要な患者様には補聴器調整や聴力改善手術、人工内耳植え込み術、難聴遺伝子検査などの最先端の医療をご提供しております。日本耳科学会認可研修施設に認定され、多くの耳科手術を高いレベルで指導できます。

また、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(ちくのう症)、鼻副鼻腔疾患に対しても、保存的治療から手術まで積極的に行っており、鼻閉に対する日帰りのレーザー手術も行っています。

患者様のQOL(生活の質)を高いレベルで改善すべく、当科のスタッフ一丸となって最先端医療を実践しています。

以下の診療に力を入れています。

耳鼻咽喉科

先進医療「一側性高度感音性難聴に対する人工内耳挿入術」

先進医療「一側性高度感音性難聴に対する人工内耳挿入術」を2021年5月より開始しました。突発性難聴などの耳の病気で聴力低下を生じ、回復が困難な片側の高度難聴が対象となります。
欧米ではすでに実施されており、その効果が証明されている治療です。この先進医療は当院当科のみで行われますので片側の難聴で、お困りのかたは是非ご来院ください。 ご来院の際は、事前に予約をおとりください。
(※2023年12月で新規の受付は終了致しました。)

人工内耳手術

高度の感音難聴の治療は従来困難とされておりましたが、人工内耳が平成6年に保険適応となり、我が国でも人工内耳装用者が急速に増え多くの患者様が聞こえを取り戻しています。
当科の岩崎医師は年間100例前後の人工内耳手術を経験しております。また、他病院の人工内耳手術の指導も多く行っており、この分野のスペシャリストです。
人工内耳は電極を内耳に挿入する手術ですが、手術後も手術前の聞こえをできるだけ保つための、「内耳にやさしい手術法」を採用しています。 高齢者で合併症のため全身麻酔が受けられない方に対しては、国内では唯一局所麻酔下の人工内耳手術が可能な施設です。ご相談ください。
小児では両耳同時の人工内耳手術も行なっています。1度の入院で両耳の人工内耳手術を行うことで、聴覚訓練も両耳で始めるため、より良好な言語発達が見られるようになりました。一側の人工内耳手術が1時間~1時間半で行うことができ、複数の執刀医体制を整えたことでこれらを可能にしました。

人工内耳手術

人工中耳手術

2016年に人工中耳手術が保険適応となりました。岩崎医師は2000年からこの最新医療に取り組み、2011年~2014年にかけて人工中耳であるVibrant Soundbridge (VSB)(図)の臨床治験が実施され、岩崎医師は医師専門家として参加しました。

補聴器は大きくした音を外耳道から入れますが、人工中耳は直接内耳へ音を入れるため、鼓膜や中耳を介さない分、良質な音質が得られます。この最新医療は、外耳道や中耳の疾患で既存の治療法では難聴が改善しない場合で、補聴器の常時使用が困難か十分な効果が得られない場合に対象となります。

慢性中耳炎等の手術を受けても難聴が改善しない方や外耳道閉鎖症の方は難聴に苦しまなくても良くなるかもしれませんので、ぜひ受診ください。

人工中耳手術

その他の人工聴覚器手術

人工内耳は高度の難聴患者様が対象となりますが、低い音の聞こえが正常~軽度難聴で、高い音の聞こえだけが高度難聴という高音障害型難聴(図1)は従来補聴器による効果が乏しく、人工内耳の対象にもならないため有効な治療法が確立されていませんでした。
しかし、低音部は直接耳から音響情報で聞き取り、高音部は人工内耳で聞き取るという新たな治療法(残存聴力活用型人工内耳:EAS)が7月から保険で受けられるようになりました。まだこの治療は限られた施設でしか受けられません。
岩崎医師はすでにこの新たな治療法の経験があり、当院では受けられますので、このような聞こえの方はぜひ一度ご相談ください。

また、中耳炎に対する中耳手術(鼓室形成術)や外耳道閉鎖症に対する外耳道形成術を受けられても聞こえの改善が十分でない方もいらっしゃいます。
従来であれば補聴器での対応以外は選択肢がありませんでしたが、それでも聞き取りが不十分な方、ならびに種々の原因で補聴器が使用できず聞こえないままであきらめている方に対して、新たな治療法として植込型骨導補聴器(Baha)を保険医療で受けられるようになりました。
比較的簡単な手術であり、聞こえを満足に取り戻す可能性は十分にありますので、このような病気による難聴でお困りの方はご相談ください。
その他、人工中耳や突発性難聴などで片耳がまったく聞こえない方への新たな治療法に取り組んでおりますので、さまざまな難聴に対し最先端医療を含めて情報をお伝えします。

最近では、先天性、もしくは言語習得前の両側高度・重度難聴で人工内耳手術によって聞き取りが改善されたという報告が多くみられるようになってきました。先天性難聴で大人になった方もあきらめず、ぜひ、ご相談いただきたいと思います。

耳鼻咽喉科

図1

難聴遺伝子診断と遺伝カウンセリング

先天性難聴の原因の半数以上は遺伝子が原因であると考えられています。また、成人発症の難聴の中にも遺伝子が原因であることがあります(若年発症型両側感音難聴)。現在保険で調べられる難聴遺伝子診断は先天性難聴と若年発症型両側感音難聴の2種類になります。当科では毎年80名以上の難聴遺伝子診断を行っています。年齢より進行した難聴の方や特殊な聴力型(低音障害型や全域障害型など)の方は検査を受ける必要があります。当科では検査の実施数だけではなく、結果が出た後の説明(遺伝カウンセリング)をしっかり行っています。また、耳鼻咽喉科医で臨床遺伝指導医取得者が2名、臨床遺伝専門医取得者が2名在籍しています。難聴遺伝子診断の日本の権威である宇佐美真一先生が専門外来として遺伝カウンセリングを月に2回土曜日に実施しています(完全予約制)。さらに、遺伝カウンセラー1名、耳鼻科医2名が参加し、初回は多くの資料を使って1時間ほどのカウンセリングを行います。このように当科は、日本において高水準の難聴遺伝子診断を受けられる施設です。
先天性高度難聴の場合、できるだけ早期に人工内耳で音を入れてあげた方が良好な言語発達がみられることがわかっています。小児人工内耳適応基準でも体重が8kg以上であれば、適応年齢である1歳以下でも手術が可能となりました。0歳児に対して人工内耳の適応を判断するには高い専門性が必要です。難聴遺伝子診断は聴力の程度や予後、人工内耳の有効性の予測に大変有用となります。当科ではできるだけ早期に人工内耳手術ができる体制を整えています。今後、具体的な難聴遺伝子変異のケースを定期的に紹介していく予定ですので、参考にしていただければと思います。

きこえと遺伝子

中耳手術(鼓膜形成術、鼓室形成術、アブミ骨手術)

当科では、慢性中耳炎などで鼓膜に穴が開き(鼓膜穿孔)、聞こえや耳だれに悩んでいる方へ鼓膜形成術、また真珠腫性中耳炎などには鼓室形成術と、患者様に応じて最適な治療法をご提案し実施しております。
鼓膜形成術は「皮下結合組織を用いた接着法による鼓膜形成術」をメインに行っており、短期入院で手術が可能になる例が多く、場合によっては局所麻酔での「日帰り手術」も可能です。鼓室形成術においても入院期間ができるだけ短く、外来受診のときに、耳の処置がほとんど不要になるような手術方法を行っています。

鼓膜穿孔(左図)と鼓膜形成術後(右図)の内視鏡写真

鼓膜穿孔に対する鼓膜再生治療について

鼓膜穿孔は鼓膜に穴が開くことで生じる伝音難聴(音が伝わりにくい難聴)や耳だれを起こす病気です。伝音難聴の改善、耳だれを止めるために、当科では鼓膜穿孔を閉鎖する患者様に負担が少ない「皮下結合組織を用いた接着法による鼓膜形成術」を実施してまいりました。鼓膜形成手術は穿孔部に自分の組織(耳後部皮下結合組織)を用いて鼓膜の上皮再生を促します。そのため、耳後部の皮膚を切開する必要がありました。
昨年、bFGF(繊維芽細胞増殖因子)製剤(リティンパ®)を使用した鼓膜再生治療が、保険診療となりました。この治療法により外来日帰り手術での鼓膜閉鎖が可能となり、当院においても2020年4月から施行開始しております。最終的な鼓膜穿孔の閉鎖率は97%です。皮膚を切開する必要がなくなりました。
患者様の費用負担は鼓膜形成手術と比較して低減しております。

詳細は中耳炎外来(木曜日午後)で説明しております。予約外来となっておりますので事前の予約をお願いいたします。または診察を受けた先生にご相談ください。

鼓膜再生の手順

先天性外耳道閉鎖症

外リンパ瘻(CTP検査、内耳窓閉鎖術)

内耳(蝸牛・三半規管など)と呼ばれる、きこえやバランスを司る組織は、外リンパ腔、内リンパ腔に分かれております。
外リンパ腔から中耳へリンパが漏出することにより、難聴(特に進行や変動するものは注意)や耳鳴り、めまいなどが生じ、これを「外リンパ瘻」と呼んでいます。原因は主に、頭部外傷、ダイビング、鼻かみ、飛行機、いきみなどが考えられています。
従来は外リンパ瘻の確定診断は困難でしたが、近年、埼玉医科大学 池園教授らの研究により外リンパに特異的なタンパク質(CTP)を調べることが可能となってきました。
当科も同様の手法で中耳から回収した検体でCTP検査を施行しております。また実際に漏出している、もしくは可能性があれば早めに漏出部を閉鎖する手術(内耳窓閉鎖術)でめまいや難聴が改善する場合もありますので、ご相談ください。

メニエール病に対する内リンパ水腫画像診断

めまいを繰り返したり、難聴が変動するメニエール病の原因は「内リンパ水腫」と言われています(図2)。当科では実際に内リンパ水腫を生じているのかを画像で可視化することによって判断する検査を臨床研究として行っております(図3)。方法は鼓膜に麻酔を行った後、経鼓膜的に鼓室内へ造影剤を注入し、24時間後に3.0テスラMRI撮影(高分解能)を行います(1泊2日)。
メニエール病をはじめとした繰り返すめまいや難聴等でお悩みの方は、原因をはっきりさせるためにもぜひご相談ください。

図2 内リンパ水腫

図2

図3 内リンパ水腫

図3 黒く抜けたところが内リンパ水腫を示しています

鼻副鼻腔疾患に対する治療

鼻づまり・鼻水・においがわからないなどの鼻症状を起こす疾患として、下記のように様々な疾患があります。

慢性副鼻腔炎(ちくのう症)

ヒトの鼻はいくつもの空洞に分かれており、それらを副鼻腔といいます(図4)。それぞれの副鼻腔は自然口という小さな通路でつながっていますが、この通路が炎症などでふさがると副鼻腔内で炎症を起こし、粘膜が腫れて粘液がたまります。この状態が長引いたものが慢性副鼻腔炎で、膿がたまると蓄膿症という状態になります。たまった粘液がさらに粘膜の炎症を引き起こし、鼻茸(ポリープ)を増生させることがあります(図5)。ポリープによってにおいの分子が嗅神経に届かないと、嗅覚障害をもたらすことがあります。嗅覚が低下すると味も感じにくくなる味覚障害を自覚することもあります。慢性副鼻腔炎を治すことで、嗅覚障害が改善します。

人工内耳手術

図4:黄色の矢印が副鼻腔になります。
副鼻腔はいくつもの小さい部屋に分かれています。

人工内耳手術

図5:慢性副鼻腔炎に罹患している鼻の中を
内視鏡で観察しています。
鼻茸(ポリープ)が確認されています。(黄色*)

主にマクロライド系という抗生物質を使い、飲み薬で炎症を抑える様に治療を開始します。ポリープがある場合には飲み薬での治療は効果があまり期待できません。全身麻酔での手術を勧めています。現在の副鼻腔手術は内視鏡を用い、鼻の穴からすべて手術を行ってしまうので昔のように顔が大きく腫れることはありません。入院は4-7日くらいになりますが、通院可能であれば短縮は可能です。

当院では副鼻腔手術の合併症を軽減させるためにナビゲーションシステムを使用して内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行しています。ナビゲーションシステムを使用することにより手術がより安全にできるようになりました。

好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎とは原因不明の難治性の副鼻腔疾患です。中等症以上の好酸球性副鼻腔炎は指定難病となることもあります。アレルギーや微生物が原因とも提唱されています。両方の鼻のなかに多発性の鼻茸(ポリープ 図6)と粘稠(粘っこい)な鼻汁が多く、鼻づまりと嗅覚の低下をもたらします。気管支喘息を合併している患者さんが多く、成人から発症することが特徴です。鼻茸(ポリープ)が充満して鼻閉があるので自然と口呼吸になり、口呼吸により誘発される喘息発作がひどい呼吸困難(息苦しさ)をもたらします。副鼻腔手術で鼻閉を改善し口呼吸の回数を減らすことが喘息発作軽減に有効と言われています。
副鼻腔手術で鼻茸を摘出しても再発する方が多く、複数回の手術が必要になる患者さんも少なくありません。

人工内耳手術

図6:好酸球性副鼻腔炎のポリープです。このポリープを顕微鏡で観察すると、この疾患に特徴的な
好酸球の浸潤(黄色矢印で示した赤く染められている細胞です。)が多数認められます。

軽症例では点鼻薬は内服などで炎症を抑える治療を行いますが、ある程度ポリープが大きくなっている場合はお薬での治療効果は限定的なので、内視鏡下鼻副鼻腔手術をお勧めしています。手術後は鼻の洗浄など慢性副鼻腔炎の治療に準じて経過を追跡していきます。鼻閉や嗅覚障害が認められた場合にはステロイドの内服を追加します。口呼吸が喘息症状を増悪させることが報告されているため鼻茸の増生が高度になった場合には再手術することを勧めています。

また、2020年より、デュピルマブという注射薬を副鼻腔炎に対して使用することが可能になりました。鼻茸を伴う副鼻腔炎で、手術しても再発を繰り返す、既存の治療で効果がないという方が対象になります。
IL-4やIL-13という免疫に関連した物質に働くことで鼻内での炎症を抑える効果がある薬剤であり、鼻茸の縮小や鼻汁の減少が期待できます。これまで継続的に行っていた内服薬が不要になる可能性もあります。
好酸球性副鼻腔炎の患者さんで指定難病に認定された場合には医療費の減額が可能なので、治りにくい副鼻腔炎の患者さんには、正確な診断や選択しうる治療方針などについて相談させていただきます。

*症状が落ち着くまでは2週間に1回、落ち着いてきたら4週間ごとの注射を行ないます。
アレルギー性鼻炎

体が外から物質を取り込んだときに過剰に反応を起こしてしまうことをアレルギーといいます。特に鼻で症状が強く出ている状態をアレルギー性鼻炎といいます(図7)。
一般的に言われているスギ花粉症はスギ花粉に対するアレルギー反応が鼻や目で強く症状が出ている物を指しています。もちろんスギ花粉だけではなく、ヒノキやイネ科の花粉、ハウスダストやダニでもアレルギーを起こしてアレルギー性鼻炎と診断されることも多くあります。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状といわれています。慢性副鼻腔炎の鼻汁とは性状が大きく異なり、水っぽくてさらさらした鼻汁が特徴的です。

アレルギー性鼻炎

図7-1:正常な鼻の粘膜

アレルギー性鼻炎

図7-2:アレルギーにより粘膜が腫れ、
水っぽい鼻汁が多く出ている鼻粘膜

内服、点鼻液を使って治療を開始します。特定の季節だけ症状が出る場合に有効です。
薬剤で思うような効果が得られないような重度の症状が認められている場合や、一年中症状が認められるようなケース、内服に制限があるような患者さんには手術加療を勧めています。
局所麻酔で行うことができ、所要時間が15分程度の下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術をまずお勧めしています。
鼻水やくしゃみが強くでる場合には後鼻神経切断術を行うことがあります。レーザー焼灼術での効果が弱い方には、粘膜下の骨を摘出して鼻腔を拡げる手術を考慮します。

舌下免疫療法

【舌下免疫療法】
スギ花粉症を対象とした「舌下免疫療法治療薬」が平成26年10月より販売開始となり、保険診療での使用が可能となりました。従来の治療法であった「減感作療法」は注射による治療でした。しかし、今回の「舌下免疫療法」は舌の下にスギ花粉症の原因となる物質(アレルゲン)を投与する方法であるため、
1、注射による痛みがない
2、皮下注射法に比べて安全性が高い
という点で注目されている治療法です。

治療には、事前に治療対象となるかを調べるための検査が必要です。さらに、治療に関する注意点も十分に理解していただく必要があります。

【オマリズマブ(商品名:ゾレア)】
従来のアレルギー性鼻炎(花粉症)治療で改善の乏しい重症スギ花粉症患者さんは、ゾレアという注射薬での治療の対象になることがあります。
これは、花粉症の症状を引き起こすIgEという物質の働きを抑えることで症状の改善を図る治療で、十分な効果が出れば従来のような内服や点鼻薬などの薬剤での治療が不要になることも期待できます。
スギ花粉の症状のある時期にしか使用できませんが、従来の治療でなかなか改善しない患者さんはこの薬剤が使用できるかどうかも含めた検査をお勧めしますのでぜひ受診してみてください。

*注射回数や量は体重や血液検査の結果によって決まります。

まずは一度受診していただき、必要な検査を行ったうえで、皆様に最適な治療法をご提案させていただきます。

肥厚性鼻炎

慢性刺激により鼻粘膜が肥厚した状態で、鼻閉の原因となります。

鼻中隔弯曲症

鼻中隔という鼻腔を左右に分ける壁が弯曲し、鼻閉を起こす疾患です。鼻腔の狭窄により慢性副鼻腔炎などの原因にもなります。

体が成長する発育過程において様々な原因で鼻中隔が湾曲して息の通りが悪くなります。外見からはわかりませんが、CTで確認すると(図8)、鼻中隔が大きく曲がっていることが分かります(黄色矢印)。湾曲の程度が軽度の場合には問題ありませんが、重度の場合には片方の鼻閉を常に自覚し、空気の通過障害を起こして粘膜の障害を生じやすくなるといわれています。
湾曲が軽度で症状がない場合にはそのまま様子を見ます。鼻閉を自覚し慢性副鼻腔炎を伴う場合には鼻中隔矯正術という手術を行います。慢性副鼻腔炎や好酸球性副鼻腔炎の手術と同時に行うケースも多数あります。

図8-1 ポリープが増生し
鼻腔を閉塞している(∗)

図8-2 鼻中隔が弯曲しており(矢印)
それにより副鼻腔炎も合併している(∗)

当院においては、内服薬で改善のない場合や病変の程度が著しい場合などは手術療法を選択しています。全身麻酔から日帰りでできる局所麻酔の手術まで、病状と患者様の希望も含めて最適な手術を提案させていただきます。鼻症状でお困りの方はぜひ一度ご相談ください。

内視鏡下鼻・副鼻腔手術

主に慢性副鼻腔炎に対して行います。内視鏡を使用した、鼻内からの低侵襲な手術方法です。
また、鼻は目や脳に近いため、合併症の予防を目的としてナビゲーションシステム(図9)を用いた手術を積極的に行っています。

ナビゲーションシステムを用いることで、手術操作を行っている部位を術中にリアルタイムに把握することができ、より安全な手術を行うことが可能です。

図6

図9 ナビゲーションシステム
鼻中隔矯正術、下甲介切除術

鼻中隔弯曲症、肥厚性鼻炎に行われる手術です。弯曲した鼻中隔の骨や軟骨を切除し、肥厚した鼻粘膜を減量することで鼻閉の改善が得られます。

下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術(日帰り手術)

アレルギー性鼻炎、肥厚性鼻炎に対して行われる手術です。鼻粘膜をレーザーで焼灼することにより、鼻閉・鼻汁などへの効果が得られます。麻酔のガーゼを鼻の中に挿入して表面麻酔を行うことで、無痛性に行うことができます。手術時間は10分程度であり、術後すぐに帰宅することができます。

内視鏡下鼻副鼻腔手術と合併症

以前は狭く操作しづらい鼻の中を目視と手の感覚で手術をしていました。鼻の空間は、頭蓋底(脳を収めている部屋の床)や眼窩(眼球を収めている部屋)に隣接しており、手術操作によっては、重篤な合併症(髄膜炎や失明など)を引き起こしかねませんでした。内視鏡やリアルタイムで確認できるCCDカメラの発達により、術野を明るく大きく拡大して確認しながら行うようになったために、合併症の頻度は減少しましたが、いまだにある一定の確率で合併症は起こりえます。

それは鼻の奥の形は人によってそれぞれ異なっており、同じ形をしている鼻はないことが理由の一つとされています。

コンピューターと画像処理技術の発達で、それぞれの患者さんの鼻のCT画像をコンピューターに取り込み、立体モデルを構築させます。合併症をおこしうる危険部位をリアルタイムで確認して手術できるのがナビゲーション手術支援システムです。当院ではこのシステムを用い、より安全に手術ができるようにしています。

嚥下内視鏡検査

●食事のムセや詰まり、食事量の減少がある方へ

嚥下機能の低下には要注意!
老化によって体力や筋力などの身体機能の低下が起こることは誰しもに起こりうる生理的な変化ですが、そこに栄養状態の悪化が加わると急激な全身状態の低下をきたすことがあります。全身状態の虚弱のことを“フレイル”と言いますがその主な要因の一つとして食事摂取の低下が挙げられます。
食事摂取の低下の原因としては先に挙げたような加齢に伴う筋力の低下や口腔乾燥・嚥下反射低下などが知られています。
嚥下機能が低下すると、知らず知らずのうちに経口摂取量が減少してフレイルをきたしたり、また誤嚥(食物や唾液・喀痰などが本来流れ込むべき食道ではなく気道へ入ること)を起こすことにより肺炎を繰り返すことがあります。日本人の死因の第3位が肺炎であるように、特にフレイルを来している高齢者にとって肺炎は時に重篤な疾患となる可能性があります。

診断とリハビリテーションでの治療
当科では嚥下機能低下の原因検索及び治療の方針を決定することを目的に、嚥下内視鏡検査を行なっています。具体的にはST(言語聴覚士)立会いの下、外来で経鼻内視鏡を用い、着色水などを用いた嚥下機能のスクリーニング検査を行なっています。検査の結果によってはSTの介入によるリハビリが必要になりますが、その場合は当院のリハビリテーション科にて外来でのリハビリテーションも可能です。また、嚥下内視鏡検査を行なうことによって、食事のつかえ感が腫瘍によるものや大動脈瘤等の全身疾患であることが判明するケースもあります。

食事の際のムセやつかえ感などが出てきて思うように食事をとることが出来なくなってきたとご心配の方はぜひとも当科の嚥下内視鏡外来を受診していただければと思います。

実際の嚥下内視鏡検査の様子

経鼻ファイバースコープにて咽喉頭を観察し、
ST同席で嚥下機能の評価を行ないます。
嚥下内視鏡検査での咽喉頭の所見

着色水を用いて実際に嚥下してもらいます。
この患者さんは嚥下後にも咽喉頭に着色水の貯留が認められ、
嚥下機能が軽度悪化していることが分かりました。

耳鼻咽喉科専門外来について

当院耳鼻咽喉科では、難聴、音声、アレルギー性鼻炎、味覚・臭覚障害、再生医療による鼓膜穿孔閉鎖、めまい・平衡検査、いびきに対して専門的な診療や治療を行っております。

詳しくはこちら

業績について

当院耳鼻咽喉科の医師による、原著、総説、著書などの業績を年ごとにまとめております。

手術実績

2023年度手術実績(2023年4月1日~2024年3月31日)

診療科 術式 2023年度
耳鼻咽喉科 人工内耳植込術(EAS含む) 93
人工中耳植込術 6
Bone Bridge 5
鼓室形成術(アブミ骨手術、鼓膜形成術等含む) 36
外耳道形成術 1
皮弁形成術 2
鼓膜穿孔閉鎖術 42
鼓膜チューブ留置術(外来手術含む) 21
顔面神経減価術 1
下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術 40
鼻中隔矯正術 48
下鼻甲介切除術 44
内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)、鼻出血止血 83
鼻副鼻腔腫瘍摘出術 2
口蓋扁桃摘出術 118
軟口蓋形成術 36
アデノイド切除術 12
ラリンゴマイクロ手術 5
耳瘻孔 2
鼻腔粘膜焼灼術 10
鼻骨骨折整復固定術、外鼻形成術 5
612

外来医師担当表

曜日 午前 午後
高橋 優宏
古舘 佐起子
岡 晋一郎
(手術)
(手術) (手術)
★岩崎 聡
古舘 佐起子
岡 晋一郎
★古舘 佐起子〈いびき・アレルギー〉
★岡 晋一郎〈味覚・嗅覚〉
★〈補聴器外来〉
古舘 佐起子
(手術)
★高橋 優宏〈小児難聴〉
★渡邊 雄介(第1週)
★〈補聴器外来〉
(手術)
★岩崎 聡
高橋 優宏
岡 晋一郎
★高橋 優宏〈難聴・人工内耳〉
★小山田 匠吾
★〈補聴器外来〉
★小山田 匠吾
★〈遺伝カウンセリング外来〉(不定期)
★交替制
【特記事項】
  • ※★印は予約制です。
  • ※ご予約の方を優先的に診療します。予約外の方は電話にてお問い合わせください。
  • ※当院初診で他医療機関からの紹介状(診療情報提供書)をお持ちの方は事前予約できます。
  • ※ご予約のない方は掲示されていない医師が診察することがあります。
  • ※午後はすべて専門外来(予約制)です。
  • ※土曜日は完全予約制です。
  • ※土曜日午前の遺伝カウンセリング外来の実施・休診日は毎月の外来医師体制表で確認いただけます。
リンク
ご予約・お問い合わせ

電話03‐3451‐8121(代表)

※14:00~17:30の間にお願いいたします。