診療科のご案内

女性腫瘍センター・婦人科

悪性腫瘍

子宮頸がん

子宮頸がんは子宮の入り口付近に発生するがんです。その多くがヒトパピローマウイルス(HPV)の感染に関連しており、異形成という段階を経てがんになります。発症年齢は20歳代後半から増加し、40歳代がピークとなります。
異形成や初期の段階では症状に乏しいため、定期的ながん検診をお勧めします。また、月経以外や閉経後に性器出血を認める場合は婦人科受診をご検討ください。

症状
不正性器出血、異常帯下、下腹部痛、腰痛など
検査
病理検査(細胞診、組織診)、画像検査(超音波、MRI、CT、PET)、採血など
治療
手術療法、放射線療法(+化学療法)、化学療法、分子標的治療薬など
病気の拡がり(進行期)により、治療方法を検討します。早期症例で条件を満たす場合、妊孕性温存治療の選択も可能です。

動画:「子宮頸がんとHPVワクチン」(YouTube)

「TOKYO#女子けんこう部」 子宮頸がんのこと

東京都福祉保健局が運営するWebサイト『TOKYO#女子けんこう部』では、子宮頸がんや子宮がん検診について、マンガや動画でわかりやすく案内しています。当院予防医学センター所属の齊藤英子医師が監修しています。動画には当院予防医学センター、女性腫瘍センター・婦人科、病理診断センターが協力しています。

子宮頸がんの予防

当センターでは子宮頸がん予防の9価のヒトパピローマウイルスワクチン(HPV6/11/16/18/31/33/45/52/58型)の接種が可能です。

子宮体がん(子宮内膜がん)

子宮体がんは子宮体部の子宮内膜から発生するがんです。その多くがエストロゲンという女性ホルモンの影響により発生します。発症年齢は50歳から60歳代でピークとなりますが、エストロゲンが関係しない子宮体がんや、大腸がんや子宮体がんが多くみられる遺伝性腫瘍の場合は発症年齢が異なります。
閉経後や月経以外での性器出血を認める場合には婦人科受診をご検討ください。

症状
不正性器出血、下腹部痛、腹部膨満感など
検査
病理検査(細胞診、組織診)、画像検査(超音波、MRI、CT、PET)、子宮鏡検査など
治療
手術療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法など
日本では、手術療法(+化学療法)が標準治療となります。早期症例で一定の条件を満たす場合には、妊孕性温存治療としてホルモン療法を選択することが可能です。

卵巣がん

卵巣がんは卵巣から発生するがんで、発生する卵巣の部位により分類されます。卵巣の表面から発生する上皮性腫瘍が最も多く、主な組織型として漿液性癌、明細胞癌、類内膜癌、粘液性癌があり、それぞれ性質が異なります。発症年齢は40歳代から増加し、50-60歳代がピークとなります。
遺伝的腫瘍や卵巣内部から発生する胚細胞腫瘍など若年層に発症する卵巣がんもありますが、いずれも初期では無症状のことが多いので、定期的な婦人科検診をお勧めします。 良性疾患で摘出した卵巣腫瘍からがんが見つかることもあります。

症状
無症状、腹部膨満感、腹部腫瘤感、下腹部痛、不正性器出血など
検査
画像検査(超音波、MRI、CT、PET)、採血(腫瘍マーカー)、術後病理検査など
治療
手術療法、化学療法、分子標的治療薬、放射線療法など
手術療法での残存腫瘍の大きさが生命予後に影響しますので、がんを残さない手術が望まれます。がんを取り切れない状況では、化学療法(抗がん剤)を先行し手術療法を行うことも検討します。境界悪性腫瘍や早期卵巣がんで条件を満たす場合、妊孕性温存治療も選択可能です。

その他のがん

卵管がん、腹膜がん、腟がん、外陰がん、子宮肉腫など上記以外の悪性腫瘍に対しても、婦人科腫瘍専門医により治療指針やエビデンスに準じた最新の医療をご提供します。セカンドオピニオンも含め当センター受診をご検討ください。

悪性以外の腫瘍

卵巣嚢腫

卵巣から発生する良性腫瘍で、主に成熟奇形腫(皮様嚢腫)、漿液性腺腫、粘液性腺腫などがあります。無症状のことが多く、婦人科検診や妊娠を機に見つかることも少なくありません。長径6cm以上では卵巣茎捻転※や破裂をきたすリスクが高くなるため、手術療法が推奨されます。患者様の年齢や腫瘍の状態により、卵巣機能を温存する腫瘍核出術または卵巣・卵管ごと摘出する付属器摘出術を行います。

※卵巣茎捻転は、卵巣腫瘍の重みにより卵巣に“ねじれ”が生じる状態であり、激しい痛みをきたすため緊急手術が必要となります。

子宮筋腫

子宮に発生する良性腫瘍で、部位により粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫に分類されます。
最も頻度が高い筋層内筋腫では、月経随伴症状(月経痛、過多月経など)を認める場合、薬物療法や手術療法が考慮されます。粘膜下筋腫は小さくても症状(過多月経、貧血、不正出血、不妊など)を呈することがありますので、子宮鏡による手術をお勧めします。漿膜下筋腫は無症状のことが多く、大きくなり圧迫症状(頻尿、便秘、腰痛など)をきたします。薬物療法は効果が乏しいとされており、手術療法を考慮します。
いずれの筋腫でも、患者様のご年齢や妊娠希望の有無、ライフスタイルに合わせた治療方法をご提案します。

子宮内膜症

子宮内膜に類似する組織が卵巣や骨盤腹膜などに発生する疾患で、月経痛や骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊などの症状をきたします。
卵巣に嚢胞性病変(チョコレート嚢胞)をきたした場合、手術療法が推奨されますが、患者様の年齢や嚢胞の大きさ、妊娠希望の有無などにより薬物療法(対症療法、ホルモン療法)を考慮します。
チョコレート嚢胞以外の子宮内膜症に対しては薬物療法を第一選択とし、ホルモン療法が無効の場合や不妊症の患者様では腹腔鏡手術による子宮内膜症病巣除去術や癒着剥離などを検討します。

子宮腺筋症

子宮筋層内に生じた子宮内膜様組織により子宮が腫大する疾患で、月経随伴症状(月経痛、過多月経、過長月経など)や性交痛をきたします。
超音波検査やMRI検査により診断可能で、治療方法として薬物療法である対症療法(鎮痛剤など)やホルモン療法(内服薬、注射、子宮内器具)、手術療法である子宮摘出術などがあり、患者様の症状に合わせた治療プランを検討します。

子宮頸部異形成

子宮頸部に発生する異常で、その多くがヒトパピローマウイルス(HPV)感染に関連しています。症状に乏しく子宮頸がん検診で見つかることがほとんどです。異常が指摘された場合、HPV検査や組織生検による精密検査を行います。
軽度(CIN1)や中等度(CIN2)の場合、3-6か月ごとの経過観察となりますが、高度異形成(CIN3)では子宮頸癌へ進行するリスクが高くなるため、手術療法(子宮頸部円錐切除術、子宮摘出術)やレーザー蒸散による治療を行います。
当センターでは子宮頸癌や子宮頸部異形成の予防としてHPVワクチンの接種も行っています。

レーザー蒸散による治療

子宮内膜異型増殖症

細胞異型を伴う子宮内膜腺の増殖により子宮内膜が肥厚し、不正出血や過多月経をきたす疾患です。本疾患の20-50%に子宮体がんが認められるので、子宮内膜の細胞診だけでなく子宮内膜全面掻爬による組織診での診断を行います。
原則的には手術療法(子宮摘出術)を行いますが、妊孕性温存治療を希望される患者様ではホルモン療法(酢酸メドロキシプロゲステロン)による薬物療法も検討可能です。

子宮ポリープ

子宮に発生するポリープ状病変で、子宮頸部の頸管ポリープと子宮体部の内膜ポリープに分類されます。頸管ポリープは無症状のことが多く、悪性である可能性も低いので経過観察となりますが、出血などの症状を認める場合はポリープ切除術を行います。
子宮内膜ポリープは不正出血や不妊の原因となることが多く、また一部に悪性病変が混在することもあるため、症状の改善目的と悪性の否定も含む診断目的として、当センターでは子宮鏡によるポリープ切除術を行っています。

女性ヘルスケア(女性医学)

更年期医療

更年期とは

閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といいます。更年期に現れるさまざまな体調の変化のうち日常生活に支障を来すような重い症状を「更年期障害」と言います。原因は女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことですが、そのほかに身体的・心理的因子や人間関係といった社会的因子が関わって症状に現れるとされています。

当センターにおける更年期医療

当センターでは患者様の症状を詳細に伺ったうえで、漢方薬やホルモン補充療法を行います。抑うつや不眠などの精神的な症状でお悩みの方には向精神薬も対応します。
更年期症状は他の病気による症状と似ている場合もあるため、内科や精神科の病気が隠れていないかを調べることも重要です。当院は他の診療科も充実しているため、他科との連携を十分に行い患者様の症状が改善されるよう診療を行っています。
また、閉経以降に予防が有用とされている骨粗鬆症の検査・治療も積極的に行っています。

治療の具体例
  • ホルモン補充療法(HRT)
    更年期障害の主な原因のひとつが閉経に伴うエストロゲン低下であるため、ホルモン補充療法が有効とされています。ただし、副作用の問題から投与が難しい患者様もいらっしゃるので、問診に加え必要な検査を行いながら最適な処方をご提案します。

    当センターで処方可能なホルモン製剤(抜粋):
    プレマリン錠、エフメノカプセル、エストラーナテープ(貼付剤)、ディビゲル(塗布剤)、エストリール腟剤(腟用剤)など
  • 漢方療法
    漢方療法は副作用が少なく、ホルモン作用もないことから、比較的安全かつ長期に使用することが可能です。また、総合的な作用によって更年期で乱れた体のバランスを整える効果が期待されます。

    当センターで処方可能な漢方(抜粋):
    当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、温経湯など
  • その他
    更年期障害での発汗や倦怠感などは自律神経の乱れで生じるため、こちらを整える薬も有効です。憂うつやイライラなどの精神症状には向精神薬の効果も期待されます。
    また、プラセンタ注射やエクオールサプリメントなどの相談もお受けしています。

    当センターで処方可能な製剤(抜粋):
    グランダキシン錠、パキシル錠、サインバルタ錠、メルスモンなど

※更年期医療に関する詳細は以下をご参照ください。
当センターにおける更年期医療

骨粗鬆症(骨粗しょう症)

骨粗鬆症とは骨がもろくなり折れやすくなった状態や既に骨折が起きている状態のことです。閉経後の骨粗鬆症では、女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏や加齢により骨形成(骨を作る)と骨吸収(骨を壊す)のバランスが乱れ骨の強度が低下します。
骨粗鬆症や骨折の予防として、食事療法や運動療法があげられます。食事療法ではカルシウム(乳製品やチンゲンサイなど)やビタミンD(サケやサンマなど)、ビタミンK(小松菜やほうれん草など)を積極的に摂取することが大切です。運動療法としては散歩やランニングなど、日常的に体を動かすことが重要です。また、喫煙や過度の飲酒は骨粗鬆症および骨折の危険因子となりますので、骨密度検査などの検診をお勧めします。
薬物療法では、骨吸収を抑える治療としてビスホスホネート製剤やSERM、抗RANKL抗体など、骨形成を促す治療として副甲状腺ホルモン製剤、その他の治療として活性型ビタミンD3やビタミンK2、カルシウム製剤など多くの治療薬がございます。
手術により卵巣を摘出され閉経を迎えた患者様(外科的閉経)では、自然閉経後の方に比べ骨粗鬆症になりやすいと言われていますので、定期的な骨密度検査や早い段階での治療開始を検討する必要があります。

女性泌尿器疾患(ウロギネコロジー)

ウロギネコロジーとは、骨盤臓器脱や機能障害を対象とした診療分野です。骨盤臓器脱は、膀胱・子宮・直腸を支えている組織が年齢とともに弱まることで排尿や排便の機能、性機能に影響をもたらす疾患です。尿失禁や過活動膀胱、頻尿などのトラブルの原因となる場合もあり、普段の生活にも影響がある場合は治療をご提案します。
簡単な筋肉トレーニングから手術療法までさまざまな治療法がありますので、加齢による変化とあきらめず、まずは担当医にご相談ください。快適で健康な日常生活を送るためにお手伝いいたします

当院では2021年3月より、骨盤臓器脱に対して、従来法と比較し再発率が低いとされる腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)を開始しましたので、併せてご相談ください。

早発卵巣不全

早発卵巣不全は「40歳未満での卵巣性無月経」と定義されます。原因が不明なものや手術によって卵巣を摘出された場合も含まれます。
ホルモン剤の補充や骨粗鬆症予防のための検査や治療を行っています。

思春期の月経異常

思春期はからだや心理的に発達し月経が開始する時期で、体重の増減にともなう月経不順も起こりやすいとされています。月経開始年齢が早すぎたり、逆に遅すぎたりする場合や、18歳になっても初経が起こらない場合は診察や治療が必要になることがあります。
当センターではこのような思春期の月経異常の診療を行っております。常勤の女性医師もおりますのでお気軽にご相談ください。

スポーツ医学(女性アスリート診療)

<女性アスリートに対する健康管理>

アスリートの方々は過度なトレーニングや運動の結果、月経不順や無月経といった症状を来す場合があります。また、運動負荷や女性ホルモンの低下による疲労骨折を来たす方もいます。
このような症状で競技に影響が出ないよう、最適なコンディションをめざして治療や医学的なサポートやアドバイスをいたします。
また骨密度の検査も積極的に行っております。

<女性アスリートの月経移動>

アスリートの方にとって月経周期によるコンディションの変化は大きな問題となります。月経困難症や過多月経だけでなく排卵前(黄体期)の倦怠感などの諸症状が試合と重なることでパフォーマンスが低下する可能性があります。
こうした問題を回避するため、月経調節の相談も承っています。処方に際しては世界アンチ・ドーピング機関(WADA)が指定する禁止薬をしっかりと確認し、適切な薬剤を処方します。

ご予約・お問い合わせ

電話03‐3451‐8121(代表)

※9:00~17:00の間にお願いいたします。