心臓血管センター
循環器内科
循環器内科では、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの心疾患、大動脈瘤や大動脈解離、閉塞性動脈硬化症などの動脈疾患、さらにはこれらの危険因子となる高血圧症、脂質異常症、メタボリック症候群、慢性腎臓病、糖尿病などに幅広く対応し、循環器疾患の早期発見・早期治療をめざしてます。
危険因子を多くお持ちの方、胸や背中の痛み、動悸、息切れなどの症状がある方は、早めの受診をお勧めいたします。
心エコー図や心電図、また心筋シンチグラムや冠動脈CTなど、最先端機器を駆使して迅速・正確に検査・診断を行います。
病状、疾患にあわせた薬物治療の他、カテーテルを用いた冠動脈形成術(PCI)、心房細動に対するカテーテル心筋焼灼術(高周波通電、レーザーバルーンなど)や抗凝固療法を継続できない方へのカテーテル的左心耳閉鎖術(WATCHMAN™)、徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療(経静脈リード、リードレスペースメーカー)、突然死予防の植込み型除細動器(ICD)、心不全に対する心臓再同期療法(CRT)など、より高い専門性を要するさまざまな治療法を、患者様の症状に応じて駆使し、迅速に対応しています。
2011年2月より救急告示病院として認可され、CCU(心臓集中治療室)を見据えて循環器内科当直の体制も充実させました。急患にも、365日24時間体制で対応しています。
難病・肺高血圧症に特化して診療する「肺高血圧症センター」の詳細は以下のリンクより参照ください。
肺高血圧症センターのご案内症状:胸痛でお悩みの方
胸痛でお悩みではありませんか?胸の痛みにはさまざまな種類があります。
- 圧迫され締め付けられるような痛み
疑われる主な病気: 狭心症、心筋梗塞、不整脈など - 鋭く刺すような痛み
疑われる主な病気: 大動脈解離・肺塞栓症(エコノミークラス症候群)、肋胸椎椎間関節症、肋間神経痛など - チクチク・ピリピリするような痛み
疑われる主な病気: 帯状疱疹、神経痛、筋肉の炎症、胸痛症候群など - 胸が裂けるような痛み
疑われる主な病気: 大動脈解離など - 胸が焼けるような痛み
疑われる主な病気: 狭心症、心筋梗塞、胃・食道炎、胃潰瘍など
そんな痛みの原因を特定することで、適切な治療やケアを受けることが可能です。
また昨今話題になっている原因特定がむずかしい「胸痛症候群」にも対応しています。
胸痛症候群とは
「病院では異常なし、原因不明と言われたけれど、ときどき胸が急に痛くなる…」このように、痛みがあるにもかかわらず異常がなかなかみつからない症状を胸痛症候群と呼びます。
症状は多岐にわたり、痛みの鋭さ、継続時間、発作的な性質、放散(他の部位に広がること)などが異なる場合があります。胸痛症候群の一部は、心臓疾患(心筋梗塞や狭心症など)や肺疾患、消化器系の問題(逆流性食道炎や胃潰瘍など)、筋骨格系の問題(筋肉の炎症や捻挫など)、神経因性の痛みなど、さまざまな要因によって引き起こされることがあります。
胸痛症候群の診断には、患者様の症状や病歴の詳細な収集が重要です。また、身体検査、血液検査、心電図、胸部X線、心臓超音波検査、ホルター心電図、冠動脈CT、心筋シンチグラムなどの検査が行われることもあります。しかし、症状や検査結果だけでは特定の疾患を確定することは難しい場合もあります。
胸痛が強い場合、呼吸困難や激しいめまい、失神などの重篤な症状が伴う場合は、直ちに医療専門家の診断と治療を受ける必要があります。
当院では、毛細血管を含むすべての冠動脈血管の機能を測定することができる「冠微小循環障害(CMD)検査」を導入しました。これにより、今まで診断がむずしかしかった「胸の痛み」の原因特定の可能性が広がりました。
主な検査方法
最先端機器を駆使して迅速・正確に診断します
運動負荷心エコー図検査
息切れ、胸の痛みが気になる方へ 「運動負荷心エコー図検査」を開始します
当院では、新たに運動負荷心エコー図検査を開始します。運動負荷心エコー図は、薬物や放射線を使わない低侵襲・低リスクな身体にやさしい検査方法で、運動中の心臓の働きの変化や血流の異常を評価することが可能です。
横になって自転車をこいでいただき、その間に超音波で心臓の異常を評価します。これまで心臓は問題無いと言われた方でも、新たなに異常が見つかって適切な治療が受けられる場合があります。ご希望される方は、まずは当院循環器内科でご相談ください。
こんな症状がある方はぜひ検査をご検討ください
- 労作に伴う息切れ
- 胸の痛み
- 胸の圧迫感
運動負荷心エコー図は、薬物や放射線を使わない低侵襲・低リスクな身体にやさしい検査方法です。患者様に運動(横になって自転車を漕ぐ)を行っていただきながら、超音波で心臓の働きの変化や血流の異常を評価します。運動の強度を段階的に増加させていき、心臓の応答や負荷に対する変化を観察します。当検査では、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、運動誘発性肺高血圧症、心臓弁膜症、肥大型心筋症、心不全などの診断や治療計画の立案に有用です。また、心臓手術前のリスク評価やリハビリテーションの効果評価にも使用されます。検査の結果を正しく判読するためには、専門的な知識と経験が必要です。
冠微小循環障害(CMD)検査
血流の速度や容積、圧力などの血液循環の抵抗値を測定し、動脈の狭窄や閉塞、末梢動脈疾患、心筋梗塞のリスク評価など、さまざまな心血管疾患に対する診断に使われます。
従来の冠動脈造影や血管内超音波検査等では見えなかった毛細血管についても測定が可能となり、これまで診断がむずかしかった微小循環障害(心臓の小さな血管の狭窄)による「胸の痛み」の原因を探ることが可能です。
OCT(光干渉断層法装置)
近赤外線を用いて冠動脈の高解像度画像を高い精度で撮影する装置であり、詳細な冠動脈病変の性状評価や適切なステント留置に威力を発揮します。最新のOCT装置にはAI機能が導入されており病変に応じた最適な治療を行うための情報を瞬時に判定することが可能となっています。
NIRS-IVUS(近赤外分光法血管内超音波)
近赤外線スペクトロスコピー法(分光法)による画像診断装置であり、冠動脈プラーク内の脂質成分の同定に優れています。病変の正確な性状評価のほかにPCIの際の合併症の予測、薬物療法の効果判定に有用であり、さらに今はまだ治療の対象とならない病変が将来的な冠動脈イベント(心筋梗塞発症など)を起こすかどうかの予測にも用いることができるとされており、治療前のスクリーニングにも有用です。
血管内視鏡
光ファイバーを挿入した内視鏡カテーテルを用いて血管内を観察することが可能な装置です。血管の性状を肉眼的に評価できるため、生体内における病理診断に匹敵する機能を有しています。冠動脈プラークの性状評価や血栓の有無、植え込まれたステントの状態評価などを直視下で行うことが可能です。
さらに大動脈内を内視鏡で観察することも可能であり、CTやMRIでは判定が困難な大動脈の動脈硬化性状を詳細に診断・鑑別することも可能です。
血管内視鏡での画像
パッチ型の長時間心電図レコーダ WR-100
最大14日間の連続記録が可能で、24時間心電図では検出できない心房細動の診断・治療効果の判定に有用です。長時間連続貼付に適した薄さ0.015ミリのテープを採用したパッチ型の防水電極を使用し、シャワー・入浴も可能です。
心エコー図
最新機種(Vivid E95)により、高画質、高度なVisual技術、2Dおよび4Dでの測定など最先端の機能により、成人心臓から小児、SHD (Structural Heart Disease)まで幅広い疾患の診断、治療適応の決定が可能です。また、経食道心エコーでは、心房細動アブレーション前の左心耳内血栓の評価、WATCHMAN™留置前後の評価、弁膜症の手術適応ならびに術式決定などに有用です。
心筋シンチグラム
心筋への血流状況や、心筋壊死の程度、心臓の機能を把握することが可能です。運動などによって負荷をかけた際の血流の変化を調べることにより、狭心症の診断、血流の不足している部位などに関する情報を得られます。
冠動脈CT(320列)
最先端超高性能CTスキャナ(320列マルチスライスCT撮影装置)を導入しています。これにより、冠動脈の狭窄をはじめとした心血管系疾患の診断能力は、飛躍的に向上することが期待されます。同時に、従来の64列CTに比べて放射線被曝量、造影剤使用量とも大幅に削減でき、患者様の負担をより一層軽減できます。
疾患について
主な疾患
ご負担の少ない、カテーテル治療を得意とします。
心臓カテーテル/冠動脈形成術 (PCI)
冠動脈に選択的にカテーテルを挿入し、造影剤を注入することにより、冠動脈狭窄に関する詳細な情報を得られます。また、心不全や弁膜症などの重症度を調べるためにも有用な検査です。冠動脈に高度な狭窄を認め、狭心症などの原因になっている場合には、カテーテルを用いてステントを留置するなどの冠動脈形成術(PCI)が可能です。最近では、再狭窄の少ない薬剤溶出性ステントが広く用いられ、良好な成績が得られています。
カテーテルアブレーション (カテーテル心筋焼灼術)
不整脈の原因部位を高周波により焼灼して不整脈を治療します。治療対象は心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍などが対象となります。患者様の病状に合わせ心房細動治療においては最新のレーザーバルーン治療も行っています。
三次元マッピングを用いた高周波アブレーション
高周波カテーテルアブレーションはカテーテル先端より高周波電流を流して熱を発生させて焼灼する方法です。発作性~持続性心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍など幅広く不整脈を治療することが可能です。三次元マッピングを使用することにより、正確な手技、手技時間の短縮、放射線被爆の軽減、合併症の予防が可能です。
レーザーバルーン
レーザーバルーンは、肺静脈入口部に膨らませたバルーンを留置、バルーン内部に搭載された内視鏡で心臓の中を観察しながらレーザーエネルギーの照射により焼灼を行う最新のアブレーション治療になります。
内視鏡を用いて目視しながら治療することにより、従来の高周波アブレーションと比較してより均一で連続的な焼灼線の作成が可能であること、バルーンのサイズ調整が可能であり様々な形態の肺静脈に対応可能な事が利点です。
また、部位ごとにエネルギー出力を調節できることから、治療効果を高めつつ、肺静脈狭窄や食道障害などの合併症リスクを抑えられることができます。
発作性心房細動をレーザーバルーンで治療した場合の長期非再発率は80%以上であったと報告されています。(※長期非再発率はJCS2021での発表)
カテーテル的左心耳閉鎖術(WATCHMAN™)
心房細動があると脳梗塞のリスクが高まります。そのため抗凝固薬(血液サラサラ)服用の必要がありますが、それにより出血のリスクも高まります。つまり抗凝固薬による出血リスクが高く(胃や腸からの出血、脳出血、眼底出血を起こしたことがある方なども含む)心房細動がある方が治療対象となります。WATCHMAN™は心房内の左心耳に装置を留置し、心房内で血栓が形成されるのを防ぐ役割を果たします。1回の手技で生涯の脳卒中リスクを低減することが可能です。
特殊カテーテル治療
高齢化が進む日本では強い石灰化を伴う動脈硬化病変を有する患者様が増加しておりこのような方の治療においては特殊カテーテルを用いる治療が選択されます。
ロータブレーター
カテーテルの先端に人工ダイヤモンドを装着した装置です。先端チップが高速に回転することで石灰化プラークを切除します。狭窄度の強い石灰化病変に威力を発揮します。
ダイヤモンドバック
先端にあるダイヤモンドで構成されたクラウンが軌道回転して石灰化を削ることができます。大きな石灰化プラークを有する病変に有用です。
病変に応じてロータブレーターと使い分け/組み合わせて使用します。
削ることが可能
エキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)
冠動脈にレーザーカテーテルを挿入し、カテーテルの先端からエキシマレーザーを照射します。それにより、生体組織に損傷を起こすことなく病変組織を蒸散させることができ、狭窄・閉塞した血管を開通することができます。心筋梗塞など血栓が豊富な病変やステント再狭窄病変、完全閉塞病変、石灰化病変などに用いています。
画像提供:株式会社フィリップス・ジャパン