脊椎脊髄センター
当センターの特徴は、
- 患者本位の治療を実施
- あらゆる脊椎脊髄疾患の治療に対応
- 世界トップレベルの最小侵襲内視鏡手術(肉体的に負担が軽い手術)を実施
- 世界最先端の革新的な治療を実施
- 難治性疾患(靭帯骨化症や脊椎脊髄腫瘍など)治療に卓越
している点です。
当センターでは、脊椎脊髄外科を専門とする整形外科と脳神経外科のメンバーにより、脊椎脊髄疾患の治療を行っています。変性疾患などの脊椎外科一般、低侵襲・内視鏡手術、側弯症などの脊柱変形、頚椎疾患、靭帯骨化症、リウマチ性脊椎炎、感染症性疾患、透析脊椎症、脊椎・脊髄腫瘍など幅広い分野の疾患に対応し、専門性の高い最新治療を行っています。また、内科的な併存疾患を有する患者様には、各診療科と協力して診療にあたっています。
脊椎(せぼね)に由来する症状で医療機関を受診する患者様は多く、平成25年度の国民生活基礎調査では、65歳以上の有訴者率は肩こり、腰痛が男女ともトップ3を占めています。脊椎には身体を支えて、首や身体を前後左右に動かすという運動器としての働きと、四肢の運動や知覚、また排尿・排便機能などを支配する神経組織(脊髄・馬尾神経)を保護するという働きがあります。脊椎には日常的に頭や身体の重みがかかり、また活発に動く部位なので、加齢とともにその構造物(骨・椎間板・靭帯など)に変性や変形が生じてきます。進行すると神経組織を圧迫し、変性や変形そのものにより痛みが生じ、以下のような症状が出現することがあります。
- 首の痛み、肩こり、背中の痛み、腰の痛み
- 手足のしびれ・痛み・脱力感
- 指が動かしづらい、細かい作業ができない
- 起立・歩行・階段昇降時のふらつき、不安定感
- 間欠跛行(歩行すると下肢に痛みやしびれが生じ、休むと楽になる)
- 膀胱直腸障害(頻尿・残尿感・便秘など)
以上のような症状が生じると、程度にもよりますが日常生活にも大きな影響を及ぼすことがあります。原因によって治療法も異なりますが、まずは薬物治療やコルセットなどの装具治療、理学療法、物理療法、あるいは神経ブロックといった保存治療(手術以外の治療法)を行います。保存治療による効果が不十分な場合、また麻痺などの重篤な神経障害を生じた場合には、手術治療を考慮する必要があります。手術は一般的に、神経組織を圧迫から解除したり、脊椎を固定・安定化したりすることによって、神経症状や痛みを改善します。
当センターで治療を行っている代表的な疾患や手術、さらに脊椎脊髄の最少侵襲・内視鏡手術を以下にお示しします。
代表的疾患・手術
脊椎脊髄 最小侵襲・内視鏡・顕微鏡手術
近年、脊椎脊髄手術は飛躍的な発展をとげており、なかでも「最小侵襲(低侵襲)手術」が注目されています。最小侵襲手術は、従来の方法と比べて体への負担を軽減した方法です。本邦では、1999 年にMEDという内視鏡手術が承認され、当センター長の石井は日本で最も早く低侵襲手技を取り入れた一人でこの分野の第一人者です。最小侵襲手術には、従来の方法と比較して以下に示すような多くのメリットがありますが、高難易度手術の1つと言えます。当センターでは、十分にトレーニングを積んだ専門医が、適応を十分に判断した上で、積極的に最小侵襲手術を取り入れています。
- 傷が小さい
- 組織侵襲が少ない
- 術後の痛みが少ない
- 精神的なストレスが少ない
- 入院期間が短縮できる
- 社会復帰が早い
- 中長期成績で腰背部筋肉の萎縮や隣接する脊椎の障害が少ない
- 感染症などの合併症の発生率が低い
- その他
脊椎最小侵襲手術の歴史
以下は本邦における脊椎最小侵襲手術の歴史です。
- 1975年
- 経皮的椎間板摘出術(Percutaneous Nuclectomy: PN;土方)
- 1999年
- MicroEndoscopic Discectomy(MED)System
- 2003年
- Expandable Retractor
- 2004年
- 腰椎棘突起縦割椎弓切除術
- 2005年
- 最小侵襲後方固定術システム
- 2005年
- Minimally Invasive Spine Stabilization(MISt)手技
脊椎最小侵襲手術の適応となる疾患
当院では主に以下に挙げる胸腰椎疾患に対して最小侵襲手術を施行しています。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部椎間板症
- 腰椎脊柱管狭窄(症)
- 腰椎変性すべり症
- 腰椎変性側弯(後弯)症
- 腰椎分離(すべり)症
- 転移性脊椎腫瘍
- 感染症性疾患(化膿性脊椎炎など)
- 脊椎圧迫骨折
- 透析脊椎症
- その他
脊椎最小侵襲手術の種類と方法
個々の患者様の診断や病態を評価し、最もふさわしいと思われる最小侵襲治療法を選択しています。症例に応じて最新式の脊髄モニタリングを使用し、これまで見えなかった脊髄や馬尾神経への侵襲を可視化することによってより安全安心・確実な最小侵襲手術を実践しています。以下に主な治療法とその特徴について記載します。
- 頚椎人工椎間板置換術
- 内視鏡下椎間板切除術
(Microendoscopic Discectomy:MED) - 最小侵襲腰椎後方椎体間固定術
(Minimally invasive surgery-posterior (transforaminal) lumbar interbody fusion:MIS-PLIFあるいはMIS-TLIF) - 経皮的内視鏡椎間板切除術
(Percutaneous Endoscopic (Lumbar) Discectomy:PELDあるいはPED) - 経皮的椎体形成術
(Balloon Kyphoplasty:BKP) - 側方経路腰椎椎体間固定術
(Lateral Lumbar Interbody Fusion: LIF), XLIF(Extreme Lateral Interbody Fusion: XLIF)/ OLIF(Oblique Lateral Interbody Fusion: OLIF)(エックスリフ/オーリフ) - 側方経路胸椎椎体間固定術
(XLIF THORACIC) - ACR
(Anterior Column Realignment:腰椎ハイパーロルドーティック ケージ) - CBT
(cortical bone trajectory:CBT) - 最小侵襲脊椎安定術
(Minimally Invasive spine Stabilization: MIStミスト) - 脊髄・末梢神経手術
- 環軸関節回旋位固定
(atlantoaxial rotatory fixation : AARF) - 先天性斜傾、遺残例に対する胸鎖乳頭筋腱切術
首下がり(首さがり)症候群に対するリハビリ療法
首下がり症候群は、比較的稀な疾患ですが、高齢化社会を背景に増加しています。徐々にあるいは急に首(頭)が持ち上がらなくなり、首の痛みのみならず、前が向きづらい(前方注視障害)、歩きづらい(歩行障害)といった症状の他、口が開けづらい(開口障害)、物が飲み込みづらい(嚥下障害)なども生じ、日常生活に大きな影響を及ぼします。日常生活が大きく障害されると、寝たきりを余儀なくされたり、体重減少や栄養障害をきたすことがあります。パーキンソン病、内分泌疾患、脳神経内科系疾患など様々な病気の結果としておこが報告されています。本疾患の原因や病態については不明な点が多く、当院ではまずその原因を同定するために精査し、徹底的にリハビリテーションや薬物療法による治療を行います。1-2週間程度の入院でのリハビリ療法により、改善をとげる方もあります(下写真)。重症例では日常生活への支障が大きく、寝たきりにつながることもあるので、手術治療(頚椎後方固定)も検討します。当院の石井は過去10年間で130例以上の治療経験を有します。首下がりでお困りの方は、是非当院へ相談下さい。
(参考)2018/10/6(土)20:00~20:45 NHKチョイス@病気になったとき 「なんとかしたい首のトラブル!」(NHK)、2018/11/17(土)、12/15(土)、20:00~20:45 NHKチョイス@病気になったとき「まとめスペシャル“首と肩の悩み”」(NHK)出演:石井賢 http://www4.nhk.or.jp/kenko-choice/
図1 (左)初診時の外観。首が自力で持ち上げられず、前が向けません。あごが胸につきそうになっています。
(右)リハビリ入院後の外観。首がまっすぐに伸び、日常生活の支障が大幅に軽減しました。
最先端の画像支援技術
当センターでは、脊椎最小侵襲手術や脊柱変形手術などの難易度の高い手術を安全に施行するため、高度な画像支援技術を取り入れています。国内でも希少なナビゲーションシステムO-arm(術中CT)や、バーチャルリアリティーなどの最先端画像支援技術を導入しており、これらはマスメディアにも取り上げられ、注目されています。
ナビゲーションシステムO-arm(左)とバーチャルリアリティー(右)による最先端の画像支援技術
その他
当院では、胸腰椎のみならず頚椎疾患に対しても積極的に低侵襲手術を取り入れています。
お一人おひとりの病態を詳細に把握するため、診察・画像所見のみならず、SF36やRoland Morris、ODI、SRS-22、BS-POPといった症状のアンケート調査も施行しています。これらを総合的に評価し、患者様の病態に合った最良と思われる治療法を選択しています。したがって、低侵襲手術はすべての疾患や病態に適応があるわけではありませんのでご注意下さい。詳細は外来主治医にお尋ねください。
関連リンク
- 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/
- 日本脊椎脊髄病学会 http://www.jssr.gr.jp/jssr_web/html/index.html
- 日本低侵襲脊椎外科学会 http://jasmiss.umin.ne.jp/
- 日本MISt研究会 http://s-mist.org/
学術活動など
受診される方へ
ご予約・お問い合わせ
電話03‐3451‐8225(予約・変更) ※月~金(除く祝日) 8:30~17:00の間にお願いします。
代表電話03‐3451‐8121(その他お問い合わせ)※月~土(除く祝日)15:00~17:00の間にお願いします。
診察を円滑に行うために、事前に下記問診票をダウンロードし、必要事項をご記入いただきまして、受診当日ご持参ください。
問診票(PDF)
※脊椎の診察ではガウン(外来でお渡しします)へのお着替えが必要になる場合があります。着脱しやすい服装でご来院ください。(冬場のロングブーツなど着脱しにくいお履き物でご来院される方は、スリッパなどをご持参ください。)
手術実績
診療科 | 術式 | 2019年度 |
---|---|---|
脊椎脊髄センター | 頸椎椎弓形成術 | 30 |
頸椎前方固定術 | 6 | |
腰椎椎弓切除術 | 121 | |
腰椎後方固定術(PLF) | 86 | |
腰椎前後方固定術(OLIF/XLIF) | 54 | |
腰椎髄核摘出術(LOVE/MED) | 16 | |
側弯症矯正手術 | 28 | |
頚椎後方固定術 | 20 | |
頚椎人工椎間板置換術 | 14 | |
その他の手術 | 37 | |
計 | 412 |
外来医師担当表
曜日 | 午前 | 午後 |
---|---|---|
月 | (手術) | (手術) |
火 | ★西山 誠(第1週) ★磯貝 宜広 ★岡田 善史 ★秋葉 絢子 ★田中 朋陽 |
(検査) (装具) |
水 | ★西山 誠 ★笹生 豊 |
★西山 誠 ★笹生 豊 |
木 | ★磯貝 宜広 ★田中 朋陽 |
(検査) (装具) |
金 | ★石井 賢(第3・5週) ★船尾 陽生(第2・4週) ★伊賀 隆史 |
(手術) (装具) |
土 | ★笹生 豊 ★<処方外来>(第2・4週) ★特別外来 |
★特別外来 |
【特記事項】
- ※ 初診、再診共に全ての診察が予約制となります。事前に予約をお取り頂くようお願い致します。
- ※ 脊椎脊髄センター初診の方は他医療機関からの紹介状(診療情報提供書)が必要となります。受診の際にはご持参頂きますようご協力をお願い致します。
- ※ 手術等で代診になることがあります。
- ※ 石井Dr外来は有料予約(22,000円)となります。
- ※ ★印は予約制となっております。