診療科のご案内

耳鼻咽喉科(聴覚・人工内耳センター)

先天性難聴で大人になった方への最新情報 ~聴覚活用をあきらめるな~

人工内耳手術は当初、言語習得後難聴者(言葉を覚え始める年齢以降に難聴となった方)が手術適応として始まり、その後先天性高度難聴児へも手術適応が拡大しました。
しかし先天性、もしくは言語習得前の両側高度・重度難聴で成人以降に人工内耳手術を受けた場合には、 その効果は限定的であると考えられ、手術適応に関しては検討課題となっていました。効果が限定的であるとされていたのは、人間の脳は幼少期には可塑性※に富んでいますが、聴皮質が音による刺激を受けないまま成長した場合、聴皮質は視覚などの別の機能に割り当てられ、そして成長に伴い脳の可塑性は失われるため、ある一定の時期を超えて人工内耳手術をしたとしてもその効果は少ないと考えられていたからです。
しかし2000年頃から先天性もしくは言語習得前の両側高度・重度難聴で思春期以降に人工内耳手術を受けた者の中にも、言葉の聞き取りが改善したという報告がみられるようになってきました。先行研究では、術前の聴力レベルやコミュニケーション手段が術後の言葉の聞き取りに影響すると報告されています。特にコミュニケーション手段については、手話や筆談などの視覚的コミュニケーションではなく、口話法などの聴覚コミュニケーションを用いた群の方が術後の言葉の聞き取りは有意に改善を認めたとの報告があります。
人工内耳の改良や術後のリハビリテーションの進歩により、先天性もしくは言語習得前の両側高度・重度難聴ですでに成人になられた方でも、聴力の改善が期待できるようになりました。
当院では聴力や言葉の聞き取りに関するさまざまな検査を実施しており、検査結果をふまえて患者様に最適な治療法を提供するように心がけております。また当院では、患者様の聴力を改善させる新たなリハビリテーションの開発にも取り組んでおります。
難聴で悩んでいる方は是非ご相談に来院ください。

※脳の可塑性・・・神経系が変化する能力