- ホーム
- 診療科のご案内
- 耳鼻咽喉科(聴覚・人工内耳センター)
- 先天性外耳道閉鎖症
耳鼻咽喉科(聴覚・人工内耳センター)
先天性外耳道閉鎖症
先天性外耳道閉鎖症の診断
先天性外耳道閉鎖症は小耳症に伴い、5,000人に1人の割合でみられます。ほとんどの方が片側ですが、10%の方が両側に外耳道閉鎖をもって生まれます。まず形成外科で小耳症の診察を受け耳介形成治療についての説明を受けた後、耳鼻咽喉科の診察も受けることになりますが、両側と片側では対応が異なります。先天性外耳道閉鎖症では伝音難聴(音が伝わりにくい)となるため、両側の場合は早期に補聴が必要となります。
先天性外耳道閉鎖症の聴力補償
両側の場合、まず骨伝導を利用する骨導補聴器を使用します。一般的にはカチューシャ型の骨導補聴器を使用します(図1)。骨導補聴器は頭の両側に骨導端子を圧着するため、疼痛により長時間の使用が難しい場合があります。そのため、外耳道形成術・鼓室形成術による聴力改善手術が行われてきましたが、外耳道の再狭窄などのトラブルや難聴が思ったほど改善しないなど、結果は必ずしもよくありませんでした。
近年、カチューシャ型骨導補聴器に代わり、軟骨伝導補聴器や貼付テープに固定するADHEARが使用されるようになっています。これらは頭皮に圧着する必要がないため、使用時間がより長くなることが期待されています。
他の治療法として人工聴覚器による聴覚補償があります。現在、日本で使用できる人工聴覚器は植込み型骨導インプラントであるBaha(図2)・BONEBRIDGE(図3)と人工中耳VSB (Vibrant Soundbridge® 図4)があります。
Bahaは耳後部にチタンインプラントを植込み、体外部のサウンドプロセッサを駆動させ骨伝導により音を伝達します。また、BONEBRIDGEは体外部からの信号により体内部が駆動して骨伝導により音を伝達します。
人工中耳VSBは従来の先天性外耳道閉鎖症治療の問題点を改善することができます。人工中耳VSBは体内部と体外部から構成され、体内部の導線の先端にあるFMT(Floating Mass Transducer)と呼ばれる振動子が内耳窓を直接駆動し、機械的振動を内耳に伝達します(図4)。その特徴は、① 装用によるハウリングや疼痛がなく長時間の装用が可能、② 内耳を直接刺激するため高音域の音を大きく伝達することが可能となり植込み型骨導インプラントより音質がよい ③ 外耳道形成を行わないため手術後のトラブルが極めて少ない という点です。当院で手術を施行した成人人工中耳VSB装用者の方からも骨導補聴器と比較して音質が良いと評価されています。そのため、CTスキャンで人工中耳VSB手術が可能である耳の構造であれば植込み型骨導インプラントより人工中耳VSBをお勧めしております。
一側性外耳道閉鎖症の聴覚補償
一側性外耳道閉鎖症では、これまで積極的な聴覚保障は行われてきませんでした。両側性難聴と比べて一側性難聴は聞こえる耳での聞き取りが可能なため、日常生活での会話には不自由が無いように一般的には思われていたからです。確かに1対1での静かな場面での会話では問題ないようですが、騒音下や多人数での会話における話し掛け、視野に入らないところからの音の近づき(音源定位)などの環境下では難渋する場合があるとされています。現在当院では、お子さんでも装用が可能な軟骨伝導補聴器、貼付テープに固定する骨導補聴器ADHEARによる補聴を一側性外耳道閉鎖症のお子さんに積極的に勧めています。
小耳症との関係〜形成外科医との連携〜
先天性外耳道閉鎖症には小耳症を伴うことが多く、小耳症の程度によっては耳介形成術が行われることがあります。日本では小耳症耳介再建手術は形成外科医によって施行されており、10歳前後に肋軟骨を使用して耳介を形成する2段階手術が行われています。そのため人工中耳VSB手術を耳介形成前に施行する場合、将来の耳介形成手術部位の皮膚損傷を避けなければならないという問題があります。 この問題を解決するため、当院では小耳症手術を多数施行している札幌医科大学形成外科、神奈川県立こども医療センター形成外科との連携を行っております。密接な連携により、現在まで人工中耳VSB手術に関連した耳介形成手術で問題は起こっておりません。 当院は日本で人工中耳VSB手術を多数行なっている病院の一つであり、小児先天性外耳道閉鎖症患者さまの手術も全員経過良好です。現在、人工中耳VSB手術を施行している施設は全国的に限られております。詳細な情報をお聞きになりたい方は是非一度受診される事をお勧めします。
ご予約・お問い合わせ
電話03‐3451‐8121(代表)
※14:00~17:30の間にお願いいたします。